詐欺の果てに待つものは

嘘と詐欺を考える

実話を元にした作品とだけあって

アメリカン・ハッスルの結末は史実同様、政治家たちは結局最後には全員逮捕されるという話で落ち着きます。そんな華麗過ぎるくらいに詐欺師として手腕を働くアーヴィングとシドニーは、やがて騙す相手に自分たちを逮捕したリッチーにも矛先を向けるのです。減刑になり、自分たちがFBIから正式に要請を受けて行動したため正当性も訴えてのものだった。そのため、最終的にアーヴィングとシドニーは事件をきっかけにしてお互いに歩み寄り、ロザリンとの間に生まれた子供の親権を勝ち得て生活していくところで終止符が打たれている。

めでたしめでたしとなっていますが、実際の史実ではロザリンの元となったマリーは世紀の詐欺師とばかりに揶揄される男の元妻というレッテルを貼られてしまう。普通の生活を取り戻すために必死だったが、それすら叶わなかった。

こう言えばマリーだけが可哀想とも言えなくもないでしょう、ですが実際アーヴィングやシドニーもそこまで状況は変わらないはずだ。いくら警察の協力あってこその行動とはいえ、それまでの詐欺行為が全て許されるかと言えばそんなことはない。詐欺をしていた、それは恥ずべき行為であり、本来なら罰せられるものだといった意見が出てくるのは普通のコトでしょう。

また警察にしても犯罪者を利用した捜査方法についても、当時は話題を呼んだことで知られています。

アブスキャム事件という名称

劇中でのアーヴィングことメルはFBIという後ろ盾を持って、組織へと潜入していきます。そこから出てくる次々と明るみにされる情報、その結果として弾圧するには十分すぎるほどの証拠まで掴んだところで大々的に行動し始めた。人の良さそうな市長までもが不正に協力していたため、尚の事アメリカ市民による同様や戸惑い、反発心などが隠せませんでした。

そんな事件だが、どうして『アブスキャム事件』と呼ばれているのか、その由縁についてどれくらいの人が知っているでしょうか。事件がこう呼ばれているのは、メル達を見出して自分の捜査に協力させていたFBI捜査官が、何とメルの言いなりになってニセのアラブ王族に扮したことから来ているというのだ。まさかの捜査官ですら詐欺師めいた行動をするまでになっていたのです。これでは当時、それで本当に正義が語れるのかと糾弾されても仕方がないでしょう。

とはいえ、この事件をきっかけにして汚職を行っていた政治家計5人は有罪判決を受けることになったという。

メルと捜査官

メルを捕まえた捜査官にすれば明らかに不正を働いている政治家たちを捕まえて手柄にする、というのが本音のはずだ。しかし彼らを出し抜くためには本物の騙しのプロを利用しなくてはいけない事も知り、メルとイヴリンに目をつけます。自分の言うとおりに行動しろ、金や手はずは全て用意すると告げるもののその内容にメルは駄目だしの応酬だった。

劇中でも語られていますが、警察官が提示した計画は穴だらけでこんな方法では騙すどころのレベルではないとまではっきりと告げるのです。それならば自分で計画をしたほうが早いとして、メルは半ば捜査官の指示を無視しながらも請け負った仕事をこなし、騙すことに白熱していく。最初は否定的だったイヴリンも同じような思いを抱くようになり、心理戦を得意とする政治家達を見事なまでに翻弄していくのだった。

その結果が政界を揺るがスキャンダルへと発展し、政治家が有罪判決を受けて、FBIに対しても苦情などが殺到するハメになる。捜査官にしたら良かれと思って、あるいは手段を選んでいる暇はないといったところだったのかもしれない。ただ結論からすればその方法が正しいものだったかどうかといえば、当時にしたらNOと言われても無理はないでしょう。

今でも許されるか

警察に協力する形で詐欺師が捜査に協力する、という話を耳にする事もある。確かに彼らにすれば手口などもそうだが、実行犯として活躍している人間の心理を事細かに評価出来るからだ。そこは警察にも理解することが出来ない人間の深層意識となっている。読み取れるだけの能力を持っていれば何時間すら解決できるでしょうが、そこまで人間は器用でもありません。そうなるとやはり取引を行うことで、捜査に協力すれば有意義だと思わせるところから始めなくてはならない。Googleの違法広告事件に関する点もそうだ。

人を騙す行為が結果的に犯罪を突き止めるための手段として用いられる事になる、と言うのは人によって思うところはあるでしょう。日本では馴染みのない話かもしれませんが、アメリカなどでは詐欺師と司法取引をすることで捜査に協力し、犯人像などを掴み取るために活用するのが今は当たり前だ。そんな人が警察の協力者として活躍することもある、なんて話を耳にするほどです。

詐欺ではありません

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